story
No.51 ペチコートのはなし
もうデザインNo(ナンバー)は13になるロシェル。
きっかけはなんですか?と聞かれたが、実のところ特にこれといった理由はなく、その頃なにげなく名付けたペチコート「ロシェル」は、まさか今も定番としてつくり続けることになるとは、当時思ってもいなかった。ただたぶん大人の着られるペチコートがほしかったのだと思う。
昔からアンティークのペチコートは好きなもののひとつ。子供の頃から古い映画にでてくる何枚も重ねたペチコートに強い憧れをもっていた。
ブロカントで見かける古いナイティやペチコートは、ココシャネルが女性たちのコルセットと何枚ものペチコートを脱がせる前のものだと思う。おそらく時代は19世紀末から20世紀初頭のもの。
すこし落ち着いたなんとも言えない白色で、たぶん手であろう刺繍やカットワークがほどこされていて、まさに古い映画で見たそのものだった。
人の手と時間がつくりあげたあの憧れのペチコートを実現させようと、それに近づけるため、まずはあのなんとも言えない白色の見本にアンティークのシーツを染工所にみせ、この白を出したいとお願いした。ちょっとした調合の違いでぶれるのでだいぶ失敗も繰り返したが、ほんの少しグレー味のあるアンティークの面持ちの白に染め上がった。
それにクラシックな図案をのせ、手刺繍の雰囲気を出すために針数や盛り方にも気を配った。いつも古人の手仕事には感服するが、あの繊細で人の手ならではの刺繍とスカラップを再現するからこそ、価値があると思うと妥協できなかった…。
以前パリで何人かマダムに声をかけられたことがある。
「あなたのジュプ素敵ね、どこで買われたの?アンティーク?」
フランス人は見知らぬ人にかまうことなく購入先を聞いてきたり、褒めたりしてくれることがよくある。そんなときアンティークと見間違うほどの完成度なのかも…。とほくそ笑む自分がいる。