story
No.7 ブルターニュ

たくさんの種類や技法があるレースの中で、少しぼってりとした、素朴な印象のそのレースは、ブルターニュ地方に伝わるレース。
モチーフをつなぎあわせたような、この地方独特のレースに心をうばわれてから、いつかこの地を訪れたいと思っていました。

春まだ浅いブルターニュ』 村に並ぶ小さな店のほとんどは、まだ閉まったまま。
マダムの店の扉も固く閉ざしていました。・・・予想はしていたけど・・・。
マダムに連絡をとると、 お店は夏のあいだだけだと一度はことわられましたが、
遠くから来てどうしてもお店を見せてほしいとお願いすると、 午後にならと、お昼もそこそこに店を開けに駆けつけててくれました。

店には、たくさんのレースがところ狭しと並べられ、 店にあるほとんどは自分で編んでいるそうで、すべてが村の女性たちの手仕事。
やがて来る短い夏にあわせて、寒い冬のあいだレースを編み、マルシェでレースを売るのだそうです。
今ではレースを編む女性はほとんどいなくなり、マダムと村の女性数人が残るのみ。若い女性はいないという。
かつてはブルターニュの村々で女性なら皆、毎日の暮しの中で、レースを編んだだろうに・・・。

この旅で幾度も目にとまったのは、女性たちはみな、頭に繊細なレースをほどこした帽子をかぶり、レースを編む古い写真でした。
こうしてこの土地に根付く伝統的な手仕事は継承するものがいなくなり、やがて消えていくのかもしれません。
町の本屋さんには、それをまるで惜しむかの様に昔の町並み、人々の暮らしや工芸などをまとめた本が多くでているように思いました。
ケルト文化の流れをくむブルターニュ。
この旅で知った、フランスの中で独特の異文化をもつブルトンの魅力は、ほんの一握りなのかもしれません。