story
No.20 ペリゴールのかご
このカゴ、ちょっと変わっているでしょう?
何年か前パリの本屋さんで見た時、原始的な荒々しい印象のそのカゴはまさに素朴そのもので一目で心惹かれてしまったのです。
ムッシューに出会ったのは本をみてから数年あとのこと。本でみたあのカゴばかりを売っているのをみつけた私はぐんぐん近づいていった。
そこにひとり座っていたムッシューは今もこのカゴを作り続けている唯一の職人だった。
「キミはもしかしてパトリックのところを尋ねた日本人だろ?」
彼は私にそう言った。世間てせまい!フランスのカゴ業界がせまいのか。
彼のアトリエ(家)はボルドーから1時間ベルジュラックという村からさらにブドウ畑のなかを車で20分行ったところ。
「是非アトリエをみたい」という不思議な日本人に彼と彼の奥さんはとても親切だった。
彼が作るカゴはペリゴール地方の独特なフォルムを持つカゴ。
いままでみた柳のカゴとは作り方がまったく違っていて自分の感覚だけで円形状に編んでいくのだそうだ。
持ち手をつけ、重石を置いて底を作り乾かしながら形成し、独特なフォルムが出来上がるの。
100年ほど前まではこの地方のだれもが農閑期に編み、市場で運搬などに使っていたらしい。
彼はそうした村のお年寄りたちからこのカゴの作り方を学んだのだ。ひとつひとつ道具も使い勝手のいいように自分でつくりながら。
なぜカゴをつくるようになったのか尋ねると、布もそうだが1本の繊維や枝が自分だけで造形されるvannierという仕事にとても魅力を感じたのだそうだ。そして今までの仕事を辞めた彼はvannierという職についた。
彼はフランスやヨーロッパ各地で自分でカゴを売りながら集めたいろいろなカゴもみせてくれ、日本のカゴも見てみたいと目をキラキラさせた。
彼は本当にカゴを愛しているのだ!私はそう思った。
彼は帰り道シャトーのブドウ畑のブドウを積み、私にすすめてくれた。
甘い!私がそう言うと、ボルドーの奴らはスノップであまり好きになれないけれどねって。
平 真実
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