story
No.11 モクレン
もうすぐ、薄紅色の花があたり一面をうめつくし、春の宴を迎える。
三寒四温をくりかえすこの頃、凛とした白い花が咲き誇る木々に目をうばわれる。
木蓮(モクレン)--blanc Magnolia--
蕾は南側にふくらむ。だから咲いたとき花びらは北を向き、
白い小鳥がたくさんとまっているようにもみえる。
人知れず作その花は、気づくと白い花をたくさんつけて
枯れた景色に春の雪をちりばめ、冷たい冬の終結をなによりさきに知らせてくれるのだ。
そして薄紅色の花が開き始めるころ、身をひきょうに静かにその季節を終えていく。
どこかゆかしく控えめで清楚なそのすがたを、レースにして服に仕立て、胸元に飾って・・・。