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story

No.45 愛してやまない「がま口」のおはなし

 

リゼッタで「がま口」をつくりはじめてもう10年ほどになるのでしょうか。つまみ部分に動物や植物をモチーフにして つくり続けてきました。


そもそも「がま口」といえば、昭和の頃、お母さんがお豆腐屋さんに通ったり、子供に少しお小遣いをもたせるときに前掛け(エプロン)の左ポケットから取り出す小さな「がま口」が目に浮かびます。


あとはおしゃれをした御婦人の持っていた「がま口」のハンドバッグ。パチンとあけると中から細々といろんな道具がでてきたりして…なんか秘密道具を見るみたいにどきどきしていました。


そして遠い記憶のそれはいつのまにか世の中からあまり重宝されなくなって、私もしばらくのあいだは忘れていたように思います。


社会に出て頻繁に財布を使うようになり、「がま口」のお財布を使うことがありました。気づいたのは「がま口」って理にかなっている、というか、便利でパチンって開いてパチンって閉まる。音もいいし1回の動作で済むのがいいのです。


「えーっと…」ってひと指し指で小銭を探したりして…。パチンって音でなんかケジメがつくというか、交感神経がはたらくみたいな。がま口にどんどん愛着が湧いてきて「お財布はがま口でないと…」って思うようになりました。

そんなこんなで私の「がま口」愛ははじまったのです。



仕事や旅行でヨーロッパに行くことが増え、蚤の市でみかけるがま口財布やバッグは、
それはそれは手の込んだ細工をほどこした「がま口」をみつけることがあります。今はもうこんなに繊細な細工をする職人はいないとか。

そう思うと一期一会、みつけると愛おしくて気になって少しずつ買い求め、いつしかこんなに集まりました。

 「がま口」って日本のものだと思っているひとも多いと思います。でもヨーロッパから入ってきたものです。


明治のころですから、そんなに古い歴史でもありませんね。それまでは巾着にいれていたみたいです。考えてみれば落語で表現している財布は、てぬぐいをくるくるっと広げてみせていますもんね。


いつしかこんな素敵で機能的な、「がま口」をリゼッタでつくることが出来たらと思いました。なにより絶やしたくなかったですし、良さを伝えたかったのもあります。

ただ、いざ目をむけてみると、私が思い描いていたような「がま口」をつくることがとても難しいことだと気づきました。


それは技術を持った職人が、もうほとんどいなかったということです。先人がかつてつくっていたような、さまざまな細工をほどこした「がま口」は夢ものがたりでした。

リゼッタのポルトモネはつまみ部分をデザイン、原型、型からおこして国内の職人の手によって口金にします。いい塩梅に調整して革と組み合わせて…。ポルトモネはそういう経緯を経て今のかたちになったのです。


キャッシュレス化が進んでいる昨今、本当にお財布自体、世の中から姿を消すのかもしれません。

古い人間が時代遅れのはなしをしたかもしれませんが、いつの時代も愛着をもって大切に使い継がれるものは、誇り高い職人たちの丁寧な手仕事にかわりないと確信しています。


現在、国内外にも「がま口」をつくれる職人はほとんどいません。大量生産された「がま口」はどこか愛着の湧かないものばかり。需要がなければ仕方のないことなのかもしれませんが、「よさを感じてもらえたら」と、またあたらしいモチーフを考えてしまいます。


わたしの「がま口」への愛情は時代がすすめばすすむほど、せつなくも深まるばかりです。


平 真実



>リゼッタのがま口「ポルトモネ」シリーズはこちらから

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