※この記事は、2019年に掲載した記事を加筆・再編集したものです。
LISETTE:鈴木さんの作品に出会ったとき、なにかのモチーフをコラージュしたような作風と温かみのある色彩に惹かれました。実物を拝見すると、表面がぼこぼこしていたり、ひっかいたような跡が見られたりします。どんな画材を選び作品は仕上げられていくのですか?鈴木さん:アクリル絵具とジェッソを使って何色も絵具を塗り重ね、引っ掻いたり剥がしたりを繰り返しながら制作します。ぼこぼこした絵肌はその作業と紙の質感から生まれたものなんです。モチーフは身近なものや、どこかで目にして印象に残っている形がほとんどです。
元々長く使ううちに生まれる色褪せや錆などの質感が好きで、自分の作品でもそのような雰囲気が出せないかと試行錯誤してきました。
時を経たからこそ生まれる優しく温かな色が出せるよう日々研究しています。
LISETTE:鈴木さんの作品はタイ産の手漉きの楮紙(こうぞがみ)を使っていますが、初めて耳にする紙でした。どのようなきっかけでこの紙を選んだのですか?
鈴木さん:凹凸のある質感を出すため、はじめは画用紙にティッシュを貼ったりしていました。ある時、偶然ラッピング用で売られていたこの手漉きの楮紙に出合ったのですが、少し厚みがあって引っ掻いたりしても丈夫だったことから長く愛用しています。
LISETTE:鈴木さんの作品を拝見していると綺麗な下書きがあってそれに沿って描いていく、というよりも即興性というのかライブ感が伝わってきます。実際はどうですか?
鈴木さん:その通りです! はじめになんとなくの雰囲気だけ頭の中に出来ていて、下書きなどはせずに一気に描き始めます。最初のイメージから変形していったり、抽象的になったり、意図しない形や色になることを楽しんで描いていきます。
LISETTE:鈴木さんがいつも作品を作る時に大切にしていることはどんなことですか?
鈴木さん:さあ描くぞ!という瞬間に、頭に浮かんでくることを描いているので、モチーフはいつも身近なものです。動物と食べることが大好きなのでよく描いています。
「好きなものや好きな形を自然体で描いていく」というあまり力まないスタイルが自分には合っている気がします。
LISETTE:リゼッタでは、「イソップ寓話」「Mythology」に続き3回目の展示となりました。今回の「夜の森」ではどのような世界が見られそうでしょうか。
鈴木さん:今回の「夜の森」の作品はLISETTEのコレクションのテーマから着想を得て制作を始めました。
冬の冷たく澄んだ空気と木々、暗闇を照らす美しい月や星、穏やかに夜を過ごす動物達を優しく包み込む大きな森…。テーマが決まり、美しい夜の森の風景と物語のようなものが次から次へと頭に浮かんできました。
夜は世界が暗闇に包まれ不安や恐怖のイメージもありますが、光が美しく輝く時間でもあります。暗い出来事が多い昨今ですが、少しでも日々の生活を明るく照らしてくれる、光のようなものをお届けできたらと作品に祈りを込めました。
絵を見てくださる皆様に幸せな夜が訪れますように。
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