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鈴木恵美 個展『Mythology』インタビュー
上:【Pegasus・ペガサス】
1年半ぶりに鈴木恵美さんがリゼッタで開催する2回目の個展「Mythology(神話)」。
鈴木さんの個展をぜひ来春に開催したい!とお願いしたのは、昨年12月頃のことでした。鈴木さんから、今回は前回の「イソップ寓話」とは違う表現方法で描きたいとご要望をいただき、どのように仕上がってくるのだろうと楽しみに待つこと、ひと月。年明けに届いた最初の一枚はこのペガサスの絵でした。前回とは雰囲気が全く違う、じわじわと心に沁みゆく静けさ、色の重なり合う深い奥行き、物語を自由に想像させてくれる作品でした。今回は前回の「イソップ寓話」と同じ表現方法で描かれたものと、新しい表現方法で描かれた作品と2種で"Mythology"は構成されています。今回の個展の魅力を鈴木さんにお話し伺いました。ぜひご覧ください。
LISETTE:今回のテーマが「Mythology(神話)」になったきっかけは何でしょうか?
鈴木さん:打合せでリゼッタのアトリエを訪れたときに、個展と同時期に発売される「トワル ド ジュイ」のテキスタイルを見せていただき、すぐに"神話"が頭に浮かびました。なんとなく有名なお話は何話か知っていた"神話"。その後いろいろな資料で調べていくうちに、
上:【Pandora's Box・パンドラの箱】
LISETTE:数々の物語がある神話ですが、作品の題材はどのような観点で選びましたか?
鈴木さん:数々の物語の中、今回は主にギリシャ、北欧、エジプトの神話からテーマを選び、他者を愛すること、自然の営みを尊く思う気持ち、祈りなど神話から感じとることができたイメージを私なりの風景にして描きました。
上:【Cats and the Light】
LISETTE:この"ペガサス"、"パンドラの箱"、"Cats and the Light"の作品は新しい表現方法ですね。前回の「イソップ寓話」の表現方法とちがう点は何でしょうか?
鈴木さん:今回の「神話」の表現スタイルは、下地を作っていくところまでは工程は同じですが、そのあと引っ掻いたり剥がしたりを繰り返すのではなく、何度も何度も重ねてグラデーションを作る方法に変えています。
書き始めるときの下書きをしないスタイルは変わりませんが、以前のような即興性やライブ感、というよりも描くモチーフとゆっくり向き合う"静"が強い、描く時の心持ちは、前回の展示会と比べ、静かで優しい空気の作品がたくさん仕上がったと思います。
今、世界は大きく変化し、
2020.4.15 鈴木恵美
鈴木恵美 個展『Mythology』はこちら
以下は前回の個展「イソップ寓話」の時に伺ったインタビューです。
今回の作品で同じ手法で描かれているものもあります。ぜひご覧ください。
LISETTE:鈴木さんの作品に出会ったとき、なにかのモチーフをコラージュしたような作風と温かみのある色彩に惹かれました。実物を拝見すると、表面がぼこぼこしていたり、ひっかいたような跡が見られたりします。どんな画材を選び作品は仕上げられていくのですか。
鈴木さん:アクリル絵具とジェッソを使って何色も絵具を塗り重ね、引っ掻いたり剥がしたりを繰り返しながら制作します。ぼこぼこした絵肌はその作業と紙の質感から生まれたものなんです。
モチーフは身近なものや、どこかで目にして印象に残っている形がほとんどです。
元々長く使ううちに生まれる色褪せや錆などの質感が好きで、自分の作品でもそのような雰囲気が出せないかと試行錯誤してきました。
時を経たからこそ生まれる優しく温かな色が出せるよう日々研究しています。に
LISETTE:鈴木さんの作品はタイ産の手漉きの楮紙(こうぞがみ)を使っていますが、初めて耳にする紙でした。どのようなきっかけでこの紙を選んだのですか?
鈴木さん:凹凸のある質感を出すため、はじめは画用紙にティッシュを貼ったりしていました。ある時、偶然ラッピング用で売られていたこの手漉きの楮紙に出合ったのですが、少し厚みがあって引っ掻いたりしても丈夫だったことから長く愛用しています。
LISETTE:鈴木さんの作品を拝見していると綺麗な下書きがあってそれに沿って描いていく、というよりも即興性というのかライブ感が伝わってきます。実際はどうですか。
鈴木さん:その通りです! はじめになんとなくの雰囲気だけ頭の中に出来ていて、下書きなどはせずに一気に描き始めます。最初のイメージから変形していったり、抽象的になったり、意図しない形や色になることを楽しんで描いていきます。
LISETTE:鈴木さんがいつも作品を作る時に大切にしていることはどんなことですか?
鈴木さん:さあ描くぞ!という瞬間に、頭に浮かんでくることを描いているので、モチーフはいつも身近なものです。動物と、食べることが大好きなのでよく描いています。好きなものや好きな形を自然体で描いていく、というあまり力まないスタイルが自分には合っている気がします。