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event

a hint of 作家 谷口 聡子さん インタビュー

a hint ofの個展はリゼッタでは2回目となります。1回目は表参道店 UNE MAISON LISETTEで開催した、昨年の夏。リゼッタは1年後の今年の夏に谷口さんへ冬のテーマ「狩人と冬の森」からイメージした作品をお願いしました。そして今回のa hint of ×LISETTEのテーマを「森- 重なり」とし、このタイトルに素敵なお話もつけてくださった谷口さん。一つ一つが繊細で、染めからすべての工程を1人でおこなう、その作品の数々は、ため息がこぼれるほどに丁寧な編みと自然からもらった色で構成されています。お守りとしてお持ちになる方もいるくらい。そんな谷口さんの作品を1人でも多くの方に知っていただきたい気持ちで今回もインタビューをさせていただきました。



LISETTE
: 「a hint of」という名前の由来はどこからきているのでしょうか?
 
「a hint of〜」は、かすかに〜を感じるの意で、「a hint of salt  」は、かすかに塩気を感じると日常に良く使う言葉のようです。

気づきにくいもの、かすかなものに気づきたい、微妙なところに気持ちを置いて、作りたいという思いを表したような言葉はないかなと考えていたところ、このフレーズに出会い、なんとなく心にフィットしました。

LISETTE: 最近、ロゴが小文字に変わりましたよね?心境の変化などがあったのでしょうか?

一番最初はすべてが大文字で"A HINT OF"でした。月日は流れ、
少し柔らかさが欲しくなり、変化をつけたい、気づきにくい所に気づく、ちょっと間違い探しのような感じも面白いかなと、"a hINT of" に。その後に、より作為的ではない”自然に生まれ出てきたように感じられるもの”を作りたいという思いが強くなり、全部小文字の"a hint of"に。とても自然で、小文字のころんとした丸みも含めて今の自分にしっくりと馴染むように思えてきたのです。

LISETTE: 繊細な糸を使った造形作品やアクセサリーを作り始めたきっかけはなんでしょうか?

武蔵野美術大学在学中に、一つの講座で、桑田路子先生の”編み”に出会い、それは、今まで思っていた”編み”の狭い概念を覆されるものでした。「編めないもので編もう」という課題で、私は、通学時に見ていた畑の白菜の色やテクスチャーが気になっていたので、『白菜』というタイトルで作品を作ることにしました。昔ながらの布団屋さんの店先に売っていたサイケデリックな柄のデットストックのカバーを、裂いて、古い糸と共に編み、複雑な白菜の質感を表しました。これが第一号の私のニットの作品であり、ニットの可能性や魅力に目覚めるきっかけとなりました。その後、桑田ニット研究所で学ぶことにし、”編み”に傾倒していきました。「この糸でこのように編んだらどんな表現になるか」「今の自分からどんな”編み”が出てくるか」それを追求し続けて、今に至ります。


アクセサリーは、造形作品を作る時の試し編みの小さなピースを友人が見て、これをブローチに仕立てたらいいのに、と言ってくれたことがきっかけで、制作を始めました。かぎ針で目をつめて編んだようなものと違って、棒針で透けるように編むとなると、形状がしっかりしなくて、アクセサリーには不向きですが、素材や方法を試行錯誤して、今のような状態に辿り着きました。





LISETTE:  一編み一編みとても時間と根気もかかるうえに、繊細な極細の糸や羊毛など扱いも難しそうに思います。作品作りで大変なことや大切にされていることを教えてください。

造形物は、年々、使う糸が細く繊細なものになり、手法や形状にしても、今までは不可能と思っていたようなことを試みているので、精神的に良い状態にして取り組むことが大事になってきています。そこで、精神の健康はフィジカルからくると思い、朝、近くの自然公園で、ジョギングをしたり、ストレッチやヨガをしたりしています。帰り道、色んな景色を眺めながら歩いていると、感覚が清浄で鋭敏になり、制作モードにスイッチが入っていく気がします。アクセサリーは、使うことを考えつつも、小さいけれど『一つの作品』と思って作っています。お守りの用に身に付けて下さっている方、使わない時は飾って眺めて下さっている方、持っていて下さる方々の尊いお気持ちを思い浮かべて、ディテールに細心の注意を払って制作しています。

 

LISETTE: 谷口さんは使われる糸や素材のどんなところに魅力を感じますか?

長年やっていると、いろんなご縁があり、様々な糸が私の元にやってきてくれます。義妹が、旅先で出会った糸を買ってきてくれたり。骨董を扱われている方から古い糸を譲っていただいたり。栃木の茂呂さんは、感性が合うのでありがたい存在です。それから、「あなたならこの糸をどうにかして使いそうだから…」と大概は編む糸ではないのですが、貴重な糸をお譲り下さる方もいらっしゃいます。古くて切れ切れになっている糸やからまってしまっている糸も、かせくり機にかけておいて、少しずつカードに巻いて使っています。(今は3台のかせくり機に糸がかかっている状態)誰も使うことのない糸、誰も編もうともしないような糸を、形にし、生かすことが、私の制作の特徴の一つと言えると思います。




LISETTE: 
今回の個展「森一重なり」によせて、テーマや作品づくりで印象的なことがありましたら教えてください

この「森」というのは、壮大な自然ではなく、私の身近にある小さな雑木林です。毎日眺めている風景、毎日見守っている木の季節による変化…見慣れた風景の中に身を置くことは、落ち着くと共に、自分の変化も感じたり、気づいたり、私にとっては新鮮で刺激的です。今回は、リゼッタの「狩人と冬の森のデザインの布を眺めていたら、「森は、色んな要素の重なりで成り立っている」という思いになり、糸を植物で染めたり、羊などの色んな毛を使ったりして、森で感じている、色や質感の重なりの美しさを表現しました。



a hint of  森ー重なり

日時  : 12月6日(金)- 12月26日(木)
場所  : リゼッタ淀屋橋店

リゼッタオンライン : 12月12日(木)-
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